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藤の屋文具店

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三大怪獣地球最大の決戦

           三大怪獣地球最大の決戦
                                 昭和39年作品

 幻魔対戦のイントロに影響を与えたとかいう話は置いといて、あの超怪
獣「キングギドラ」がデビューした作品である。宇宙から飛来した隕石が
不気味に光り始め、そこらじゅうのものをずるずると引きつけてうんうん
唸り出して、上空に立ち昇る金色の光がしゅうんと収まると現れる、金色
にうねうね光る三つ首の竜。ものすごくかっこよかった。モスラみたいに
ばさばさ飛ぶんじゃなく、ラドンみたいにぴゅーっと飛ぶのでもなく、ア
タマ三つがうにょうにょと蠢きながら引力光線を吐いて飛行するシーンは、
何か神聖な恐怖を感じさせるものであった。

 怪獣部分のストーリィは、宇宙からやってきたキングギドラを、ゴジラ
とモスラとラドンが力をあわせて撃退する、というもの。この、「力をあ
わせて」の部分が・・・・・。まず、怪獣語でみんながお話しするという
のがいただけない。それも、かなり論理的な思考の会話である。人間ども
はいつも俺たちをいじめる、だの、この地球はみんなのものだ、だの、そ
んな知能があるなら街を壊したりするなよなんてツッコミを入れたくなる
くらいである。ここまで擬人化したら、怖くなくなる。幼虫モスラが二匹
を説得するのだがうまく行かず、モスラだけで果敢に立ち向かっていって
ぼこぼこやられ、それを見ていたゴジラとラドンが、心を打たれて戦いに
参加する、というのも、なんだかなぁ、である。しかもまたこれが、ゴジ
ラがシッポをモスラにくわえさせて引っ張って運ぶとか、ラドンがモスラ
を背中に乗せて、空中から糸を吐かせて攻撃するとか、やりたい放題であ
る。

 それに引き換えキングギトラ、何を考えてるのかわからない顔で、ひた
すら世界中を壊しまわる。小さい子どもが公園でアリを踏み潰して歩くみ
たいなものというか、アタマの悪い高校生が夜の校舎の窓ガラスを割って
歩くみたいなものというか、とってもコワイ。目をあわしちゃいけません、
的な怖さである。しかもこのころのゴジラ映画は、たっぷり予算があった
みたいで、破壊の演出が凄い。山の中の小さな町に着地してのしのしと歩
き、どこの町にもあって日常になじみが深い神社の鳥居を、引力光線でふ
っ飛ばすのである。これは、子供心に効いた。戦車が飛んでってもいまひ
とつ現実感がないが、いつも遊んでいる境内にあるアレがふっ飛ぶんだか
ら、がぜん臨場感がわいてくるのである。

 いっぽう、人間ドラマのほうは、亡命してきた王女が金星人に憑依され
て別人として振舞う、とか、それを殺し屋がつけねらったり、かっこいい
刑事がボディガードをやってて、王女とほのかにラブラブになったり、こ
れはこれでいろいろてんこ盛り。「次元の裂け目」とかいって説明する円
盤研究会のおじさんとか、不思議雑誌「ムー」の広告だとか、細かいとこ
ろもいろいろと演出が効いていたりして、なかなか楽しめた。

 この作品から、ゴジラは人類の味方として、悪役怪獣をやっつける側に
まわることになり、映画館に観にいっても、だんだんと不満を抱えて帰る
ような作品に変化して行ってしまった。この作品に満足していたのは、多
分にキングギドラの存在に負うところが大きい。



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